子どもをやる気にさせる話

子どもがやる気を出すとき、その意欲の源となるのは夢と希望です。「あんなふうになりたい」「こんなことをやってみたい」という夢みる力と、「ボクにもできる」「ワタシだってやれる」という希望を子どもたちにどう与えるか。
そのヒントがギュッとつまった話をご紹介します。

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象学級通信・学年だより・教科通信

私は「わかってもらえない」苦しみは、
人間の苦しみのうちで第一級のものだと信じております。

中島 義道(電気通信大学教授)『私の嫌いな10の言葉』

 なかなか解けないで苦しんでいた数学の問題が解けたとき、誰よりも先にクイズの答えがわかったとき、初心者にとって複雑なコンピュータの操作がわかったとき、思わず「ヤッター!」と叫ぶ。わかったときの喜びは心を軽くする。しかし、ずーっと心にわだかまり、苦しんでいたことを推察して「苦しかったでしょう」などと理解し、慰めてもらえたときの「わかってもらえた」嬉しさは他に喩えようもない。(中略)

 反対に、わからないこと、わかってもらえないことでは、前者に該当することなら自分の能力のなさを自分に責め、後者のことなら人にわかってもらえない苦しみをも自分に向けることが多いのではないだろうか。

 進学問題で一年以上悩み続けていたK子は、苦しみに耐えきれなくなってS教諭に相談した。S教諭は泣きじゃくりながら訴えるK子の話を黙って聞いていた。わかってもらえない心の苦しみをすべて吐露したK子が落ち着きを取り戻したのを見て、S教諭はK子の心の葛藤を読み解いて進むべき道を示してK子に選ばせた。心身共に快復して大学に進学できたK子が、後で「あんなに黙って聴いてもらったのは初めてだし、わかってもらえて本当に嬉しかった」と母親に打ち明けたという。わかってもらえる喜びは第一級の喜びだ。

(『生徒に贈る夢と希望がふくらむ150の言葉』佐藤允彦著/学事出版より)


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