第13回理想教育財団 教育フォーラム

2024年2月25日(日):時事通信ホール

開催プログラム

開催テーマ

子どもたち一人一人の「生きる力」の育成のために

特別講演

子どもたちがこれからの時代を生き抜くために育む力
― ICT活用を視野に入れて ―

講師 放送大学 オンライン教育センター長・教授

中川 一史 氏

基調講演

子どもたちが言語能力を高めるはがき新聞の活用
― 一人一台端末を用いる新しい授業アイデア ―

講師 早稲田大学教職大学院 教授

田中 博之 氏

シンポジウム

言語能力を高め「生きる力」を育む
― ICTと「はがき新聞」を活用して言語活動を充実する ―

コーディネーター放送大学 客員教授

佐藤 幸江 氏

シンポジスト 大阪体育大学 教授

蛯谷 みさ 氏

大阪府熊取町立中央小学校 教諭

岸 香里 氏

日進市立日進西中学校 教諭

河村 敏文 氏

「子どもたち一人一人の『生きる力』の育成のために」をテーマに、第13回理想教育財団 教育フォーラムを開催

 第13回目の開催となる今回の教育フォーラムでは「子どもたち一人一人の『生きる力』の育成のために」をテーマに、未来を託す子どもたちの言語能力の育成とICTの活用について、さまざまな教育的視点からご登壇された先生方に考察していただきました。
 開会に先立ち、当財団の田中正信専務理事は、令和6年能登半島地震の被災に対するお見舞いの言葉や財団の設立経緯などを述べ、「ご参加の先生方と共に私も学んでいきたい」と挨拶。その後、フォーラムが開会されました。


ICT活用による、子どもたちがこれからの時代を生き抜くために育む力

 特別講演「子どもたちがこれからの時代を生き抜くために育む力 ― ICT活用を視野に入れて ―」では、中川一史先生が「現場への問題提起」や「端末活用3つのフェーズ」「Next GIGAへのアプローチ」などについて解説を行いました。

 現在は、自ら課題を見つけ解決する力の育成や他者と協働し自ら考え抜く学びが不十分であり、「教え込む」から「学びとる」授業への転換の必要性を論じたうえで今後超えるべき壁を、時間・空間・主体・教科・あたり前の5つと定義。具体例と体験談を交えて、子どもたちが主体的に学べる環境や個別最適な学びに関する知見などを述べました。


子どもたちの言語能力を高める「はがき新聞」とデジタル化による効果

 基調講演「子どもたちが言語能力を高めるはがき新聞の活用 ― 一人一台端末を用いる新しい授業アイデア ―」では、田中博之先生が、はがき新聞にバランス良くデジタル化の方向性を取り入れることで、子ども主体で言語能力が身につくといった有意義な活用のあり方について説明しました。

 はがき新聞を書くことで得られる言語能力として「論理的思考力」「資料引用力」、セミデジタルを取り入れることによるメリットとして「対話の時間が設けられる」「お互いのコメントを踏まえたうえでの授業」などを解説。さらにフルデジタルの先進事例として、ChatGPTを活用したはがき新聞を紹介しました。
 田中先生は、デジタル化を取り入れることで、人間関係力、実践力、実行力などの効果があると評価し、各教科・領域での活用を期待したいと述べました。


ICTとはがき新聞の活用、充実した言語活動への取り組みと実践例

 佐藤幸江先生をコーディネーターとしたシンポジウム「言語能力を高め『生きる力』を育む ― ICTと『はがき新聞』を活用して言語活動を充実する ―」では、蛯谷みさ先生、岸香里先生、河村敏文先生が登壇しました。
 佐藤先生は、シンポジウムの趣旨から始まり、現状の課題や新たな社会Society5.0に向けて、未来を託す子どもたちに対する思いを丁寧に述べられました。そして、今回のテーマが「デジタルVSアナログ」ではなく、はがき新聞を使った授業改善であることを伝えられました。

 蛯谷みさ先生は、はがき新聞の活用と言語活動の充実、ICTの活用を通してはがき新聞の有効性を高めることをテーマに説明。アナログ、アナログ+デジタル、デジタルの3種類は、発達段階や目的に応じて選ぶことが可能であると説きました。また、学級力向上プロジェクトや教科等横断的なカリキュラムの実例として、クラスメイトとの距離感を縮めるとともに、語彙力や表現力を高める「もっとともだちおまじない」を紹介。書く前の事前準備や教科横断、ICT活用の留意点など、実務に役立つ内容についても説明がありました。

 岸香里先生は、サブタイトル「単元に『はがき新聞』を位置づけた実践」として、小学校での実例を掲示。児童の実態と課題に基づく、主体的・対話的で深い学びとして、教科横断的な単元構成を具体例とともに紹介しました。 書くことに苦手意識を感じる子どもに対しては、最初に子どもの実態や学年に合わせたてびきを与えることの重要性を力説。さらに付箋やウェビングの活用など具体的かつ役立つ内容を詳しく解説し、はがき新聞により、短期間での子どもの成長が感じられたと発表を締め括りました。

 河村敏文先生は、中学校実践編としてギガ端末とアナログのはがき新聞の使い分け、二次活用について提示。特別支援学級の学びの支援や、人前で話すことに苦手意識を持っていた子どもが、はがき新聞を通して自信をつけ、成長した実例について紹介しました。

 岸先生より、書くことや話すことが苦手な中学校での生徒さんへの対応について河村先生に質問があり、河村先生からは、技術科の最適解を求める際に、他者参照の視点を活用していると回答。同時に、すぐに他者の回答を参考にしないよう、あらかじめ1時間~1時間半程度は個別に考える時間を設けておくことの重要性を力説されました。

 最後に、佐藤先生は「今回ご登壇いただいた岸先生、河村先生のようにさまざまなバリエーションで授業改善に臨んでいる学校がある一方、コロナ禍により負のスパイラルに陥っている学校があります。教育格差が広がることは、子どもたちにとっては良いことではありません。ぜひ、チーム学校として、学習指導要領の理念を見据え、ギガ端末を活用し、『はがき新聞』で言語活動の充実を図るなど、令和の日本型学校教育の実現を目指していただきたい」と力説。「今後は、学習者とともにワクワクしながら研究を進めていただきたい。また、今日の学びが先生方のスタートのきっかけになればありがたい」とシンポジウムをまとめました。


質疑応答

 最後の質疑応答では、進行役として田中先生及び特別講演をされた中川先生、シンポジウムに参加された先生方が登壇し、時間の許す限り参加者からの質問に答えていきました。

 中川先生は「文房具の1つとして扱う端末の管理責任」に関する質問に対し、一教員にすべての責任を負わせるべきではないと述べ、行政や教育庁が前向きに動く重要性と問題発生率は決して0(ゼロ)にならないことの共通認識の必要性を説きました。
 佐藤先生は「個別最適な学びをコーチングするなかでの、学びとる力の育て方」の質問に対し、複数のパターンを提示。子どもたちの実態を見据え、考えながら授業づくりを行い、学校内や地域で共有することの必要性を強調。そのうえで、子どもたちの意識を変える重要性を伝えました。
 河村先生は「学びとる力を育てるうえで大切にしているポイント」の質問に対し、デジタル・アナログの両面から回答。デジタル・アナログの使い分けに加え、技術科の授業では「答えはない」ことや、最適解を求め、最終的には納得解を探すことなど、日頃から子どもたちに伝えている内容を回答されました。
 岸先生は「教科横断的な授業の評価の方法」の質問に対し、ポートフォリオにまとめたことで、学びの変化や心の成長が見て取れたことや、国語科の場合は文章構成力や接続語、助詞の使い方など自らの評価基準を紹介し、基準を定めて対応する必要性を述べました。
 蛯谷先生は「はがき新聞が、書く力や情緒に課題のある子どもに与える影響」の問いに対し、コンパクトサイズのため、子どもが負担を感じずに参加できる点を挙げました。直感的にお互いの良さを感じ、相互理解が可能なため、それぞれの子どもの良さが引き出され自信につながると答えました。
 最後に田中先生が、はがき新聞のフォーマットに関する質問に回答し、充実した質疑応答の時間が終了しました。

 閉会にあたり、当財団の田中正信専務理事が「本日は、素晴らしいお話、ご報告をいただき、たくさんの学びがあり、明日からの授業にお役立ていただけるものと思います。私どもも先生方のお話を参考に、今後さらに学校教育の振興に寄与するよう、事業に努めてまいります。本日はありがとうございました。」と述べました。

 今回も、フォーラム会場ロビーには、「はがき新聞」などの実践例が多数掲示されました。休憩時間には多くの参加者が興味深く見入り、参考にしている様子でした。

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