学級通信なんでも相談室

第17回
通信には、どんな文章がふさわしい?

「私は、文章を書くのが苦手です。その上、書き始めるとついダラダラと長くなってしまいます。これでは、読者によく読まれないだろうなと自分でも思ってしまいます。学級通信にふさわしい文章ってあるのでしょうか?どうしたら通信らしい、良い文章が書けるようになるでしょうか」というお便りをいただきました。
その悩み、よく分かります。私自身、文章を書くのが大の苦手。いつも四苦八苦して書いています。それでも、恥を顧みず書き続けてきました。私の考えをお話ししましょう。

「学校から来た印刷物だから」「担任の先生が書いてくれたものだから」必ず読んでくれるという時代ではありません。形式(レイアウト)の面でも、内容(見出しと本文)の面でも、「読んでもらえる工夫」が必要です。昨今は、学校から連日のようにおびただしい数の印刷物が家庭に届きます。保護者は、その中から「これは見ないで捨てても構わないもの」「これはざっと目を通しておけばよいもの」「これは必要事項をメモしておくべきもの」「これは後でじっくり読んでみたいもの」「これは冷蔵庫のドアに張っておくもの」等、判断しながら振り分けています。あなたの学級通信は、どの分類に入るでしょうか?

教師にとって「しゃべること」と「書くこと」は仕事の重要な構成部分を占めています。どちらも、場数を踏んだからといって自然に上手になる訳ではありません。それなりの修行が必要ですし、学べば学んだだけの効果はあると思います。大きな書店に行って探したり、インターネットの本検索サイトで「文章の書き方」「文章修行」などのキーワードで検索したりすれば、たくさんの本が見つかります。気に入った一冊を選んで、読んでみるのも無駄ではないでしょう。この理想教育財団のホームページに掲載されている辰濃和男さんの「実践文章講座」は大いに役立ちますし、辰濃さんには『文章の書き方』(岩波新書)という名著もあります。

同時に、私が特にお勧めしたいのは、新聞の記事です。文章には、「論文」「物語」「報告書」「随筆」「意見文」「報道文」など、いろいろなジャンルがありますが、学級・学年・学校通信の文章というのは、「報道文」(ニュース記事)的なものと、「コラム」(時事的な話題を扱った随筆あるいは意見文)的なものが、大半を占めると思います。前者は、「いつ、どこで、だれが、なにを、どうして、どのように起きたか、その意味は?そしてどうなる?」など、必要最低限の要素を落とさず伝えることが求められます。重要度の高い内容から書くのがコツです。後者は、書き手が一番言いたいことを明確に伝えるため、如何に説得力を持ってそこにたどり着かせるか、何よりも最初の数行で読者を主題に引っ張り込む「書き出し」が大切になってきます。共に注目すべきは、文章の長さです。短くて200字、通常は400字程度、長くても600字から800字以内で締めくくりたいものです。これが、保護者が抵抗感なく読める限度でしょう。ぜひ「簡にして要を得た」新聞の文章、特に「コラム」を参考にしてほしいと思います。

よく「私は、通信に良いことも悪いこともありのままに全部書くんです」と言う方がおられますが、私の考えは違います。全ては書かない方がよい場合が少なくありません。人権上の配慮ということもありますが、それより何より、私は通信のねらいは「肉声のコミュニケーション」を促すところにあると思っていますから、例え事件の「報告」であっても通信の文章だけで自己完結しない書き方の方を選びます。つまり、問題提起がある文章です。親子で、親同士・子ども同士で、親と教師で、子どもたちと先生とで、率直な話し合いを持つきっかけになるような文章こそが望ましいと思うのです。通信は、大きな教育活動の流れの中の一部であるという位置づけです。

いずれにしても、自己満足に陥らないように、批判的に読んでくれる読者、感想を率直に語ってくれる読者を持つことが、文章力向上の秘訣だと思います。