感動を伝える講話集

「子どもたちが楽しみにするような感動的な話をしよう」というコンセプトのもとに、小学校の校長が月曜朝礼で話した87の講話から精選。歳時記、伝記、童話、民話、感動的な出来事、スポーツ、映画、演劇と話材のジャンルは幅広く、「学校だより」や「学級通信」を通して保護者の心にも響く題材として活用できるものが満載です。 

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象 学校だより・学級通信・学年だより ねらい 自分らしさを生かすことの大切さ

ウサギとカメ

みなさんは『ウサギとカメ』のお話を知っていますね。そう、ウサギとカメが山のふもとまでかけくらべをし、カメが勝つお話です。

ところで、『ウサギとカメ』のお話で、「どうしてウサギは負けたのでしょうか」とみなさんに聞くと、だれもが「途中でウサギが居眠りをしてしまったから…」と答えますが、本当はそうではないのです。実はこのお話には別の意味が隠されているのです。

もともと、ウサギとカメでは、生まれたときからくらべものにならないほど、走る速さは違っているのはわかっています。その二匹にどうして速さくらべをさせたお話にしたのでしょうか。そこには、みなさんにぜひとも知ってほしい大切なことが含まれているのです。

カメは自分が遅いということはちゃんと知っていました。しかし、自分の目標をウサギに勝つことではなく、山のふもとまで行き着くことにしました。そして、目標に向かって最後までがんばる自信があったのです。

一方、ウサギはカメに勝つことだけに目標をおきました。ウサギは自分の足の速さを自慢するくらいですから、楽勝だと思っていました。そして、自慢する気持ちが油断となって、「居眠り」をしてしまったのです。

カメは自分の能力とウサギの能力を決してくらべませんでした。もし、「速さ」ということでウサギとくらべたら、「かなうはずがない」と競争はしなかったでしょう。しかしカメは、自分はゆっくりでも最後までがんばれるというよさを信じて競争に臨んだのです。

みなさんも、勉強のことや運動のことで、友だちとくらべたりしないで、自分のよさを十分生かして努力してください。

(『小学校 心のとびらを開く月曜講話』青木靖著/学事出版より)