感動を伝える講話集

「子どもたちが楽しみにするような感動的な話をしよう」というコンセプトのもとに、小学校の校長が月曜朝礼で話した87の講話から精選。歳時記、伝記、童話、民話、感動的な出来事、スポーツ、映画、演劇と話材のジャンルは幅広く、「学校だより」や「学級通信」を通して保護者の心にも響く題材として活用できるものが満載です。 

<ご利用にあたって>
以下の文章を通信に引用される場合は、文末にある出典(書名・著者名・出版社名)を明記して下さい。


対象 学校だより・学級通信・学年だより ねらい 何事も自分から行うことの大切さに気づかせる

自分から

関根廣志(新潟市立寄居中学校長)

みなさんはモーグルという競技で、昨シーズンのワールドカップにおいて5回も優勝した上村愛子選手の名前を知っているでしょうか。モーグルはスキーでこぶのある急斜面をすごいスピードで滑り、途中空中で2回演技をする競技です。

上村選手はこれまでもオリンピックの代表として活躍しましたが、惜しくもメダルには届きませんでした。昨シーズンはターンの技術を磨き、誰よりも速く滑れるようになったため、たくさんの勝利を重ねることができました。ですから、もし昨年オリンピックがあったら金メダルは確実だとも言われていました。

ところで、ある新聞に、その上村選手のお母さんが愛子さんについて話したことが載っていました。とても心に残っていますので、みなさんに紹介してみます。

上村さんの「愛子」という名前は、将来、みんなから愛される子どもになってほしいと願って、ご両親がつけた名前だそうです。
しかし、お母さんが言うには、「愛されるかどうかは相手があることなので、みんなに愛される子どもに育てることは、とてもむずかしいことだということがわかった。そこで、考え方を変えて、自分の方からみんなを愛する子ども、他人に思いやりをもって接することのできる子に育てよう、それならできると考え、そういうふうに育てた」というのです。

私はこれを読んだとき、上村選手がどんなときでも笑顔でインタビューに答えているのは、そういうことだったのかと納得しました。
それと同時に、私はハッとさせられました。私はそれまで、「あの人は自分に挨拶をしてくれない」「誰も自分に話しかけてくれない」などと悩んだり、不満に思っていたことがありました。

しかし、この話を読んだときから「そんなことで悩むのはやめよう。自分の方から挨拶すればいいんだ。自分の方から話しかければいいんだ」と思い、少しでも実行するよう心掛けました。それからは、自分の心もずいぶんと軽くなりました。

みなさんの中にも、同じような悩みをもっている人がいるかもしれません。どうかみなさん、これからは、もっともっと何事も「自分から」ということを心掛けていこうではありませんか。そうすることで、毎日が明るくなるとともに、みなさん自身もひとまわり大きく成長していくに違いありません。

(『月刊Principal』2008年6月号/学事出版より)