ブックタイトル季刊理想 Vol.127

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概要

季刊理想 Vol.127

生まれた子供への母親からの贈り物で温まった雛たちが一斉に出てきた時、雌親が盲腸糞が、最近の研究でもそのような大発見に恵まれましたちはいつものように母親について行かず、母親のしたた。私は現在、環境省のライチョウ保護に取り組んでいと見ていると、なんと雛たちは盲腸糞をついばんで食べをしたのです。その後に、奇妙なことが起きました。雛ます。この鳥が生息する高山帯に設置したケージで、をケージの外に出した時のことです。母親のお腹の下盲腸糞の周りに集まったのです。どうするのだろうか始めたのです。孵化したばかりの雛連の家族を、捕食者と悪天候から人の手で守っています。孵化3日目の雛を連れた家族恵まれることがあると、以前に書いたことがありますが、このような行動を見たのは、初めてです。何か重要雛が母親の盲腸糞を食べた!理刊)季想2018春号◆13この行動は一体何か。長い間鳥の研究をしています長い間鳥の研究を続けていると思いがけない幸運につ免疫を受け継ぎ、病気や感染症にかかりにくくなに盲腸糞を採集したのです。両者の雛の盲腸糞に含ケージ保護した野生のライチョウの雛は、孵化後るという仕組みがあるように。もしそうだとしたら、ないか?さらには、細菌やウイルスに対する母親の持つまれる細菌を比較すると、明確な違いがありました。その盲腸から出された盲腸糞には、消化を助ける消免疫をも糞から受け継いでいる可能性も考えられま鳥類では初めてのたいへんな発見です。糞を食べ、消化細菌を母親から受け継いでいるのでは化細菌が多数います。もしかしたら、雛は母親の盲腸母親か人工孵化し動物園で育てている雛からも一週間おきす。人間の子供が母親の母乳を飲むことで、母親の持草食であるライチョウは、長い盲腸をもっています。翌年には、ケージ保護を実施した孵化直後の雛と週間おきに盲腸糞を採集しました。また、然の発見がその秘密を解明しました。ですが、消化はDNAだけでは十分に対応できません。ないと直感しました。の一週解けた50年間にわたるにわたるライチョウ飼育は終わりました。継続的に飼る耐性が低く、平地での飼育は、感染症にかかりやすし、2004年には、最後の個体が死亡し、40年以上感染症の問題を克服できなかったからです。寒冷な環境である高山に生息するライチョウは、病原菌に対すんでした。しかもそれらは、飼育舎内の雑菌ばかりほどの細菌を持っていました。それに対し、人工孵育できなかった最大の理由は、細菌やウイルスによるを集めたものでした。化した雛は400種類ほどの菌しか持っていませ間ですでに母親が持っているとほぼ同じ4000種類山岳博物館が1961年から開始しています。しかライチョウの飼育は、長野県大町市にある市立大町、一らライチョウ飼育のなぞな意味がある行動に違い何が必要なのか、50年という長い時間の研究で、偶親から子に引き継がれるのは両親の遺伝子DNA人間載と鳥の世界?中村浩志(中信村州浩大志学国名際誉鳥教類授研究所代表理事●中村浩志先生プロフィール1947年生まれ。信州大学教育学部卒業。京都大学大学院修士課程修了および博士課程単位取得。専門は鳥類生態学。理学博士。これまでの主な研究はカワラヒワの生態研究、カッコウの托卵生態と宿主との相互進化に関する研究、ライチョウの生態と進化に関する研究など。2002年、カッコウの研究で第11回「山階芳麿賞」受賞。日本鳥類学会元会長。ライチョウ会議議長。主な著書に『戸隠の自然』『千曲川の自然』(ともに信濃毎日新聞社)、『甦れ、ブッポウソウ』「ライチョウが語りかけるもの」(ともに山と渓谷社)、『二万年の奇跡を生きた鳥ライチョウ』(農山漁村文化協会)など。連