ブックタイトル季刊理想 Vol.125
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季刊理想 Vol.125
● 特別寄稿 ● 国語科を 遠藤真司(えんどうしんじ)先生●プロフィール早稲田大学法学部卒業後、民間企業勤務。後に東京都公立小学校の教諭となる。校長を退職後、現在は早稲田大学教職大学院客員教授、開智国際大学教育学部准教授を務める。専門領域は国語教育、学級経営、教員養成。東京都小学校国語教育研究会会長等を歴任、多くの学校の研究会講師で指導にあたる。NHKのニュース番組等で教育問題のコメンテーターも務める。著書:「教育の質を高める教育原理」共著(大学図書出版)「小学校国語 板書で見る全単元の授業のすべて」共著(東洋館)他多数。国語科教育が基盤となる学級力の育成 国語科では「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の三領域がある。この三領域で培われるべき三つの力を伸ばすことが、子どもたちの学力とともにコミュニケーション力を高め、ひいては学級力の向上につながっていくのである。 国語科の「話すこと・聞くこと」では、言葉を表現する時にどのような言い方だとその場にふさわしいかということを考えさせ指導をする。「ごめんね」と相手に謝る言葉も、心から悪かったねという気持ちが表現される言い方と、先生に言われたから仕方なく言っているんだという言い方では、同じ「ごめんね」という言葉でも相手が受け止める感情は全く違ってくる。この指導は子どもたちの日常の生活場面でも生かされることになる。 運動会で民舞「ソーラン節」を踊った学年がある。運動会が終わったあとよく行事の作文を書くことが多いが、ある時「運動会のソーラン節を通して学んだこと」という作文を書いた学級があった。はじめはうまくいかなかった踊りが、放課後や休み時間に上手な友達に教わって、自分もだんだんうまくなってくるのがわかった。当日、最高の踊りになったのは教えてくれた友達のおかげであり、一緒に踊った学級の友達全員の力が一つになったからだという作文を書いた子がいた。教室に張り出されたこの子の作文に、自分もそう思った、ぼくも成長できた、という感想の付箋がたくさん貼られた。これは「書くこと」「読むこと」の活動を通して、子ども同士がお互いを認め合う成長の場となったのである。 国語科はあらゆる学習の基礎基本にあたる。それはどの教科学習も、言葉を通してものごとを考え、言葉を通して自分の考えを人に伝えるからである。このような言葉の力を高め伸ばしていき、有機的に結びつける授業は国語科である。子ども同士の人間関係のトラブルは言葉によるつまずきから始まることが多い。そしてそれを解決するのもまた言葉の力なのである。 日常の国語の授業の中で自分の考えを根拠をもとにして友達と伝え合う「話すこと・聞くこと」の場を多く設定し、語彙力を高め、確実に力をつけさせること。自分の一番言いたいことを的確に表現する学習として「書くこと」を頻繁に取り入れること。特に「はがき新聞」のようなコンパクトな形だと、教師も子どもも負担感が少なく日常的に取り入れやすい。そして書いたものを子ども同士がお互いに「読むこと」で、友達の考えを知り、思いを共有できることになる。国語科の授業を行いながら、子ども同士の人間関係にまで指導の視野を広げ、人間形成をはかる優れた教師の授業では、確実に子どもたちに言葉の力がついてくる。 「よい授業の陰によい学級経営あり、よい学級経営あるところによい授業あり」確かな国語科の授業が学級の力を高めるのである。10 ◆ 季刊理想 2017 秋号