ブックタイトル季刊理想 Vol.117

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概要

季刊理想 Vol.117

アクティブ・ラーニング とは何か最善の答えを「協働」で創り出すアクティブ・ラーニング中央教育審議会は、次期学習指導要領の改訂に向けた議論を進めています。この中で大きな関心を集めているのは「アクティブ・ラーニング」の導入でしょう。そのポイントは、何でしょうか。 脱工業化社会であり、情報化やグローバル化が進展した21世紀の社会では、必ずある「正解」に効率的にたどりつく力ではなく、「正解のない問題」に対して「最適解」を創り出す力が求められます。これに対して、現行の総合学習、探究学習などは、どのように行われているでしょうか。率直に言って、教師が既に用意または想定している「正解」にたどりつくような学習になっていないでしょうか。また総合学習や探究学習の中で、想定した「正解」に子どもたちを導くような予定調和的な授業を教員はしていないでしょうか。 このような指導は、アクティブ・ラーニングの入門編としては有効かもしれませんが、本当の意味でのアクティブ・ラーニングとは言えません。アクティブ・ラーニングでは、子どもたちを「正解のない問題」に取り組ませる必要があります。その上で学習評価の面では、「正解のない問題」をどう発見し、それにどう取り組んだか、そしてどんな最適解を出したかなどの過程を細かく見るパフォーマンス評価が求められることになります。 重視される「協働」とその中身 ジャーナリストの立場から見て、アクティブ・ラーニングのもう一つのポイントと言えそうなのが「協働」です。下村文科相による中教審への諮問では、アクティブ・ラーニングについて「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」と説明しています。これについて文科省幹部らに聞くと、「主体的」は当然のこととして、「協働的」な学習というところにより重点が置かれていることがうかがえます。つまり、一人の力ではなく、大勢の力を集めて「正解のない問題」を発見し、みんなでよりよく解決していく方法を見つけ出すという「協働」がアクティブ・ラーニングの大きなポイントの一つというわけです。 そして、ここで注意したいのは「協働」の中身です。日本で協働的というと、「みんなで仲良く」「目標に向かって一緒に」といった同質的・統一的なニュアンスがあります。しかし、価値観や伝統・文化が全く異なる人間が集まるグローバル社会では、このような「協働」は成り立ちません。それぞれが違う価値観を持ち、互いにそれをぶつけ合い、決定的な対立を避けながら協調する道を模索するのがグローバル社会における「協働」です。決して、みんなで仲良く協力し合うという「お花畑」のような世界ではないのです。価値観や意見が対立する中で、相手を説得したり妥協したりしながら、最善の答えを創り出していくという「協働」を子どもたちに身につけさせることが重要だと思われます。 これから教育関係者は、グローバル化した社会の中で、なぜアクティブ・ラーニングが必要なのかを考えることが大切です。同調圧力の強い同質的・画一的な集団の中で、みんなで仲良く「正解」を探すという予定調和的な学習は、これから必要となるアクティブ・ラーニングとは言えないでしょう。8 ◆ 季刊理想 2015 秋号