ブックタイトル季刊理想 Vol.117
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季刊理想 Vol.117
下村博文文科相は2014年11月、中央教育審議会に次期学習指導要領の改訂を諮問しました。その中で検討課題の一つとして示されたのが、「アクティブ・ラーニング」の導入です。その背景には、21世紀の社会が脱工業化社会となり、情報化やグローバル化の進展によって、従来のような「何を教えるか」というコンテンツベースの教育が通用しなくなり、習得した知識・技能を活用して「何ができるようになるか」というコンピテンシーベースの教育が求められるようになったことが挙げられます。 ところでアクティブ・ラーニングについては、教育学者や文部科学省関係者などの専門家がさまざまな解説を既にしているので、詳しいことはそちらに譲ります。本稿ではジャーナリストの立場から、取材などを通じて得た、今後のアクティブ・ラーニングのポイントと思われる事項を指摘したいと思います。 狙いは意識改革へのインパクト 文科省の公式な文書でアクティブ・ラーニングが初めて登場したのは、いわゆる「大学教育の質的転換答申」と言われる中教審答申(2012年8月)です。この中では「能動的学修」と訳され、大学において知識習得型の一方通行授業から、討論や体験学習を重視した双方向授業への転換が提言されました。このようにアクティブ・ラーニングはもともと高等教育の用語だったわけです。そして初等中等教育、特に小中学校教育ジャーナリスト斎藤 剛史さいとう・たけふみ1958 年、茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社入社、「日本教育新聞」記者、同教育行財政班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て退社。98 年よりフリーのジャーナリスト兼編集者として、主に教育分野を中心に執筆活動などをしている。では、総合学習、探究学習、調べ学習などさまざまな形で実質的にアクティブ・ラーニングが現在でも実施されています。 これに対して、下村文科相が中教審への諮問でアクティブ・ラーニングという言葉を使用した理由の一つは、やや手垢のついた感のある探究学習などの代わりに、あえて初等中等教育にあまりなじみのない言葉を使うことで、次期学習指導要領が教育内容だけでなく、これまでの指導観や授業観そのものを変えていくことを学校現場に示すためのインパクトを意図したものです。そして二つ目として、小学校から大学までアクティブ・ラーニングという「統一用語」を使用することにより、日本の学校教育全体を転換していくことを明確化して、そのための意識改革を教職員に促すという狙いもあります。 「正解のない問題」に取り組む 一方、初等中等教育関係者の間では総合学習や探究学習などを既に実施していることもあり、アクティブ・ラーニングへの対応は、従来の活動をより充実させればよいという受け止め方もあります。このような解説をする教育学者も少なくありません。しかし、この受け止め方はやはり不十分でしょう。というのも、アクティブ・ラーニング導入のもう一つの背景には、「グローバル人材の育成」という社会的要請があるからです。季刊理想 2015 秋号 ◆ 7