ブックタイトル季刊理想 Vol.117
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季刊理想 Vol.117
原稿用紙との比較 さらに、原稿用紙との比較を行いました(表3)。その結果、原稿用紙に比べ、小学校でも中学校でも、「はがき新聞」に書くことの方が概ね満足度が高いことが明らかになりました。 違いの大きい項目としては、特に中学校においての、やる気、取りかかりやすさ、文章の量などが注目されます。「はがき新聞」の場合、よりコンパクトに書ける点で、書くことに対する「抵抗感」が原稿用紙よりも小さいと言えそうです。 「漢字の使用」では、むしろ原稿用紙の方が高い数値となりました。「はがき新聞」の書きやすさや取組みやすさが漢字の使用意識と関わっている可能性も考えられます。今後、「はがき新聞」でしっかり漢字を使うような取組とはどういったものかを考えていくことも必要と言えそうです。国語学力(成績)との相関 では、成績との関連はどうなのでしょうか。今回、中学校1校での調査だけですが、はがき新聞と原稿用紙のそれぞれにおいて、総合満足度と成績との関連をみることができました(図1)。 原稿用紙では成績上位群(国語科の通知簿評定が4ないし5)では比較的満足度が高いものの、成績が中位群(同評定3)、下位群(同評定2および1)となるにしたがって、満足度が低下することが明らかになりました。これに対して、「はがき新聞」の場合、成績下位群でもおおむね満足度が高いと言えます。ここから、はがき新聞の場合、成績によらず満足度の高い取組であることが明らかになったと言えます。おわりに 今回の調査によって、「はがき新聞」の満足度が高いことが、一定の規模の調査のもとに、実証されたと言えます。特に、意欲という学びの根底にあるものについても満足度が高いこと、そして、まとめる力や見出しなどのスキル的な側面でも満足が高いことが明らかとなりました。 しかし、今後の課題もあります。質的側面を重視して、下書き・推敲によって仕上げていく書き方と、量的側面を重視して、量産的にどんどん書くという書き方、というような書き方の違いもあります。今回の調査ではそうした取組の在り方に応じた分析とはなっていません。評価との連動をどう考えるのか、教科や領域ごとの活用のしかたをどうするのか、などもそれぞれです。具体的な活用の仕方について検討していくことも重要な課題です。 また今回、学年によって満足度に違いがあることも明らかになりました。学年の違いに応じた取組の在り方とはどういったものかを考えることも必要でしょう。 今後の方向性としては、例えば国語科に位置づける場合、「どのような学力に着目するか」「どのように授業計画に取り入れ、」「個々の時間にいかに活用していくか」といったことを明らかにしておく必要があります。さらに、「はがき新聞」は書く前の準備段階も含め、アクティブ・ラーニングとしての位置づけもできますが、これにあたっては、具体的な教材や教育場面に関連づけた指導法を開発することも必要です。今回の調査の結果を生かし、さらに子どもたちの「考える力」「書く力」を確実に伸ばす「はがき新聞」の指導法を開発し、検証をしていきたいと思います。図1.国語学力と書く実践別における総合満足度平均値表3.はがき新聞と原稿用紙の平均値の比較満足度全体やる気満足取りかかりやすさ書く文章の量自分の意見の伝えやすさ文章をまとめて書く力友達の考えの分かりやすさレイアウト(構成)の工夫見出しと内容との関係漢字の使用3.753.433.643.653.703.573.843.813.854.113.873.533.103.373.263.303.483.723.803.404.013.893.713.363.743.733.803.493.843.683.564.213.643.532.533.062.642.733.353.603.693.194.053.83質問項目小学校はがき原稿はがき原稿中学校上位(n=51) 中位(n=47) 下位(n=22)4.543.532.521.510.50はがき新聞原稿用紙3.69 3.423.743.213.823.08RESEARCH6 ◆ 季刊理想 2015 秋号