ブックタイトル季刊理想 Vol.117

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概要

季刊理想 Vol.117

●かみや のぶゆき1983 年弁護士登録。社団法人著作権情報センター主催「市民のための著作権セミナー」の講師担当。『知って活かそう!著作権』『編曲家の権利』など著書多数。学校と法律<第29 回>弁護士 神谷 信行●かみや のぶゆき1983 年弁護士登録。社団法人著作権情報センター主催「市民のための著作権セミナー」の講師担当。『知って活かそう!著作権』『編曲家の権利』など著書多数。季刊理想 2015 秋号 ◆ 19噛みつき事故が起こったら また、飼い犬が他者に対して噛みつき事故を起こした場合について、地域の条例に届け出義務が定められているのが一般です。東京都の場合、動物の愛護管理に関する条例29 条1項で、噛みつき事故から24 時間以内に都知事に報告する義務を飼い主に課しています。さらに2項は、飼い主に対し、噛みつき事故から48 時間以内に、狂犬病に関する獣医の検診を受けさせる義務を規定しています。 これらの規定を守らず、事故の届け出をしなかった者に対して拘留(1日以上30日未満の自由刑)または科料(1,000 円以上1万円未満の財産刑)の罰則、獣医の検診を受けさせなかった飼い主に対しては5万円以下の罰金の制裁が規定されています(同条例40 条2 号、39 条2 号)。噛みつき事故の後、知事は飼い主に対し、事故防止のための措置(飼育施設の設置・改善、施設内飼育・保管、口輪装着、殺処分等)を命じることができます。噛みつき事故についてのこのような規定はあまり知られていないと思われますので、詳しくご紹介しました。 この他、噛みつき事故を頻発させた飼い主に対して、重過失傷害罪の刑事責任が問われることもありえますし、被害者の治療費や入通院慰謝料に関する民事責任も発生します。 ペットを飼うことについて、このような法的責任が伴うことを、子ども達に教室で教え、生命の尊厳を守り抜く真の飼い主を輩出していただきたいと思います。守るべき基本原則 最近、ペットについて法律相談を受けることが多くなりました。動物愛護管理法は、2 条1項で、「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。」とし、動物に接する人間の守るべき基本原則を規定しています。 犬や猫を飼うことについて、法律上特別の許可はいりません。(なお、同法の施行令別表には、飼育そのものについて許可が必要な動物が列挙されています。イヌ科で許可が必要な動物として、オオカミ・コヨーテ・ジャッカルが挙げられています。)具体的な飼い主の責任は 犬や猫を飼うことに許可がいらないため、飼い主の責任を明確に認識せずにペットを飼っている人も多いと推測します。 同法7条は、その1項で、動物の種類、習性等に応じて適正に飼養し、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならないと定め、飼い主の自覚を促しています。そして、動物についての感染性の病気の知識を持って予防のために注意を払うこと、動物の逃走防止の措置をとること、できる限り動物が命を終えるまで飼育すること、動物が繁殖しすぎないための措置をとること等、具体的努力義務を規定しています。教室で、ペット飼育について注意したいこと学校でも、ペットを飼っている児童・生徒も多いと思います。今回は、動物愛護管理法の柱となる条文をご紹介し、飼い主の責任について考えてみます。