ブックタイトル季刊理想 Vol.117
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季刊理想 Vol.117
するもの はじめに、再度、“確かな学力と生きる力”とはについて、問い直したい。“学力とは何か”の問いに対して、誰をも納得させる定義をなすことはなかなか難しい。一般には、“それまでに習い覚え、また体得した知識によって養われた能力”と考えてよい(株式会社岩波書店 岩波国語辞典第六版)。 その中核となるものは、古今東西、“読み”、“書き”、“計算”と相場が決まっている。この基本コンピテンシー(Competency)をベースにして、様々な分野・対象に関わる知識、概念、理解、応用、想像・創造が成り立つと考えられている。 問題は、学力の転移(Transfer)なるものが、どのように人間の脳の中でなされているかということが、現在の脳科学からも未だに解明されていないが故に、様々な教育的議論と指導のあり方に関する議論、試みがなされているわけである。 また、“常識”というある社会的文脈の中での価値形成においても、学力とどのような関係があるのかも興味深い。人工知能(ArtificialIntelligence) 研究において、コンピュータにこの常識(推論)を実現させることほど困難なことはない。 いわば、常識に関与させる知識が膨大で、非単調性を持っているからである。さらに制約条件を予め準備できない、さらにしてしまっては意味がなくなるからである。 初等中等教育レベル(必ずしも限定する必要はないが)では、やはり、記憶する力、反復する根気力、計算する力、理解する力、表現する力、提案する力、論理的に構成する力、分析する力、まとめる力、さらには疑問をもつ力も入るであろう。そこには、興味・関心をもつ力も多いに関与する。 このような学力形成のための指導力は、並大抵のものではない。 指導においては、強制や規則遵守の厳しい対応も求められようし、児童・生徒の自律心に委ねざるを得ない場合もあろう。基本的には、児童・生徒の学力をベースにした物事の論理的説明力と実体との接触から事柄の内延、外延的特長、意味・意義をどれだけ実感させられるかということのように思われる。 そこに生きた有用な知識が形成されることを期待する。 さらに、思考活動には、発散的思考と収束的思考があるといわれるが、前者は“発想”、後者は“まとめ”という行為に対応するであろう。 日常的には、それぞれの思考活動は、相互に補完し電気通信大学名誉教授/京都情報大学院大学教授 岡本 敏雄先生学力形成のための指導力確かな学力工学博士(東京工業大学)。1947 年、京都生まれ。東京学芸大学大学院修士課程修了。電気通信大学大学院情報システム学研究科長、同大学院学術院長を歴任。現在、電気通信大学名誉教授・京都情報大学院大学教授。季刊理想 2015 秋号 ◆ 11