第14回理想教育財団 教育フォーラム

第14回理想教育財団教育フォーラム

2025年10月19日(日):丸ビルホール

開催プログラム

開催テーマ

学びに向かう子どもたちに必要なこと
-読み解く力と書くこと-

特別講演

「シン読解力」で指摘している問題点とその原因

講師 国立情報学研究所 社会共有知研究センター センター長・教授

新井 紀子 氏

基調提案

読むために書く 学びをつなぐために書く
「1枚ノート」の活用のてびき

講師 佐賀大学教育学部 教授

達富 洋二 氏

実践報告

「1枚に書く」ことを続ける国語科の学習

講師 天草市立本渡南小学校 教諭

金子 直美 氏

「1枚に書く」私の学びの履歴

講師 鹿児島大学教育学部附属中学校 教諭

中村 恵理 氏

ワークショップ

「1枚ノート」を使った単元づくりの実際

講師 佐賀大学教育学部 教授

達富 洋二 氏

まとめ

おわりに-書く力・読む力のために

講師 早稲田大学文学学術院 教授

森山 卓郎 氏

「学びに向かう子どもたちに必要なこと-読み解く力と書くこと-」をテーマに、「第14回理想教育財団 教育フォーラム」を開催

 第14回目の開催となる今回の教育フォーラムでは「学びに向かう子どもたちに必要なこと—読み解く力と書くこと—」をテーマに、子どもたちの読み解く力や書く力を育むことの大切さ、さらにはその具体的な実践法などについて、ご登壇された先生方に考察・発表していただきました。
 開会に先立ち、当財団の田中正信専務理事は、財団の事業内容や財団設立の背景について述べるとともに、「子どもたちの読み解く力が弱体化している」と、現状の教育の課題を指摘。今回の教育フォーラムにおいて「読み解く力や書くこと」に焦点を当てた狙いを説明した上で、「私も皆さま方と共に学んでまいりたい」とあいさつしました。


シン読解力を伸ばすには

 特別講演「『シン読解力』で指摘している問題点とその原因」では、新井紀子先生から次のような内容の講演が行われました。理想教育財団機関誌「季刊理想」158号に掲載した内容を以下に転載します。
 教科書や辞書、新聞などで使われる「知識や情報を伝達する目的で書かれた自己完結的な文書」を読み解く力を「シン読解力」と呼んでいます。シン読解力を測定・診断するために私が開発した「リーディングスキルテスト」の結果から、子どもたちの多くが教科書を正しく読めていないこと、シン読解力と学力に高い相関関係があることが分かりました。
 2024年度に行われた「経年変化分析調査」では、前回(2021年度)に比べて全教科で平均スコアが低下しました。さまざまな分析がなされていますが、この間、教育現場でどのような動きがあったでしょうか。端末の導入・活用です。
 学習場面では、子どもたちの脳のワーキングメモリに大きな認知負荷がかかっています。既に認知負荷が目いっぱいだったにもかかわらず、新たに端末の活用が進んだことで、子どもたちの認知負荷はより大きくなり、オーバーフローを起こしてしまったのではないか。脳科学的に見れば、これが成績低下に至った最も有力な仮説だと考えます。
 シン読解力を伸ばし、学力を向上させるには、学習課題とは直接関係のない認知負荷(課題外在性認知負荷)を下げることから始めなければいけません。そのためには、視写や音読、暗算や筆算など、正しいトレーニングを積む必要があります。
 課題外在性認知負荷が下がれば、子どもたちは授業の本丸の課題に対して、十分にワーキングメモリを用いることができます。その結果、子どもたちは学びに集中し、授業の質も向上します。
 福島県相馬市の小学校では、教科書の視写などのトレーニングを行ったことで、全国学力・学習状況調査のスコアは大きく上昇しました。予測困難な時代を生きる子どもたちにこそ、こうした新しい基礎基本の徹底が大切です。


読む力、書く力を高めるための四つの提案

 基調提案「読むために書く 学びをつなぐために書く『1枚ノート』の活用のてびき」では、達富洋二先生は、まず「日常的に文章を書く」「言語活動の中でしっかり書く」「振り返りをおまけにしない」「学びをつなぐ」の四つの取り組みの実践を会場の先生方に提案。併せて、書くことの充実に向けて、青木幹勇先生が提唱した「第一の書く」(書写)、「第二の書く」(作文)、「第三の書く」(言語活動として書く)に加えて、達富先生自身が考案した「第四の書く」(自分の学びを自覚するために書く)の内容を説明しました。
 また、効率性が求められるあまり、教育現場で作文や音読の時間が減り、ワークシートの多用が進む中で、子どもたちに思考の時間を確保することの重要性を改めて提起。また、適切に学習の振り返りを進めるために、教師の板書の工夫が求められている点も強調しました。
 さらに、四つの提案を地道に進めた学校ほど学力テストの点数が上昇している点にも言及。続けて、教師と子どもとの間に生まれる一番大切なものは「声のやりとり」と強調した上で、子どもたちの声をもっと大事にして、教育活動を展開することの大切さも訴えました。


「1枚に書く」活動を丁寧に継続した国語科の実践

 小学校における実践報告「『1枚に書く』ことを続ける国語科の学習」として、金子直美先生は、「1枚に書く」活動を効果的に取り入れた国語科の実践を紹介しました。まず、普段の授業の流れに沿って、1枚に書く活動をどのように進めているのか、その狙いや効果も含めて具体的に説明しました。さらに、リーディングDXの指定校で勤務する本年度は、紙・ノートと端末のバランスを取りながら、実践を続けている点も紹介しました。
 継続的に取り組んだことで、各種学力検査の点数が上昇するなど、1枚に書く活動は、学力向上にも寄与した点を紹介。最後に、子どもたちを「書けるようにする」のは教師の仕事と受け止めて、これからも実践を重ねていきたいと意欲を見せました。


手書きにこだわって進めた「1枚に書く」活動

 次に中学校における実践報告「『1枚に書く』私の学びの履歴」として、中村恵理先生は、国語科の学びでは、言葉とじっくりと向き合い、表現することが大切と力説。その上で、教育現場で効率性が求められる中でも、あえて手書きにこだわって進めた「1枚に書く」実践を、三つの代表的な活動に沿って、具体的に紹介しました。
 その上で、「生徒が明確な目標と学びの見通しを持って、学習に取り組むことができた」「自分の学びを自覚することで、身に付いた力を次の学びに生かそうとする姿が見られた」など、成果も強調。3年間にわたり取り組んだクラスでは、全国学力・学習状況調査の国語の通過率(正答率)が全国平均より約3ポイント高かった点も紹介しました。最後に、「学びに浸る生徒の姿から私も謙虚に学び、生徒たちと共に授業をつくっていける教師でありたい」と今後の抱負を述べました。


ワークショップ形式で1枚ノートの特長、活用法を紹介

 ワークショップ「『1枚ノート』を使った単元づくりの実際」では、達富洋二先生が進行役となって、会場の先生方に、1枚ノートを活用した「視写」を体験してもらった後、視写の学習効果や1枚ノートの特長・魅力などについて説明しました。初めに体験の時間を設けたことで、会場の先生方はより納得感を持ちながら、達富先生の説明に耳を傾けていました。
 続けて、達富先生は、1枚ノートを活用した教育活動や単元づくりについても言及。単元が始まる1カ月ほど前に、1枚ノートを使って、子どもたちに視写や音読をさせておくことで、子どもたちの授業の理解度はより高まると説明しました。さらに、規定の文字数で書き切る実践を行うことで、子どもたちの書く力が高まる点を紹介した上で、継続的に取り組むことの重要性を強調しました。


コンパクトに書く活動で、書く力・読む力を高める

 まとめ「おわりに-書く力・読む力のために」では、森山卓郎先生は、全国学力・学習状況調査の国語の問題などを例に、つなぎ言葉(接続詞)や「~と思う」などの表現の多様性とそれぞれの意味の違いを説明。子どもたちの表現の幅を増やし、書く力を高めるためにも、「今日はこういう言葉を使ってみよう」「段落を分けて書いてみよう」など、付けたい力を焦点化して、コンパクトに書く指導を繰り返すことの有効性を強調しました。
 また、近年、急速に進化しているものの、時には間違いをおかす「生成AI」を上手に利用するためにも、利用する人自身が言葉をしっかり使いこなし、その意味や書かれた内容を分析できる力を持つことが必要と強調。そのような力を付けるためにも、コンパクトに書くことは役立つと力説しました。


閉会

 閉会にあたり、当財団の田中正信専務理事が「本日は素晴らしいお話を聞かせていただき、ありがとうございました。私自身も学ばせていただきました。本日の実践報告やワークショップでも取り上げられた『1枚ノート』は、今後、財団の助成品として先生方に提供できるよう、公式ガイドブックの制作を含め、準備を進めているところです。子どもたちにより良い教育ができるよう、今後も努めてまいります。本日はありがとうございました」と述べました。

 フォーラム会場ロビーには、「1枚ノート」や「はがき新聞」などの実践例が多数掲示され、参加者の関心を集めていました。

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