学級通信なんでも相談室

第10回
学年の中での協力体制を築くには?

「学級通信を出したいと思っているけれど、学年主任が“学年の和を大切にしましょう”と言うので、なかなか言い出せない」とか「自分のクラスだけ発行しているので、なんだか同学年の先生たちから白い目で見られているような気がする」、「誤字脱字や不充分なところをチクチクと責められるのでやる気が失せてくる」などという声を聞くことがあります。気持ちよく通信活動が行えるよう学年の中で協力体制を築いていくためには、どうしたらよいでしょうか。

最初にどうしても確認しておかなければならないことは、学級通信を出すのは「絶対に必要なこと」ではないということです。学習指導・生活指導など教師本来の仕事から言えば、いわば「おまけ」の活動です。本来の教育活動を側面から支え、よりよく展開するためにこそ発行するものです。発行することによって、本来の仕事が少しでも滞るような事態を招いたら、まさに本末転倒です。その意味で、学年のコンセンサスが充分得られない段階では、発行を断念したり、時期が到来するまで待つ、という選択肢も充分考えられることです。

その場合でも、「オール オア ナッシング」と考えないことです。学級通信とは銘打たなくても、通信に書きたいと思っている内容を実質的に伝える方法はあるのではないでしょうか。例えば、保護者や子どもたちに向けて担任からの報告やお便りという形でプリント類を不定期に出すということは出来るでしょう。「名を捨てて実を取る」いき方です。

「学年の和」や「連携・協力」は、もとより大切なことです。それは、よりよい教育、より充実した教育を子どもたちに提供するためにこそ必要なものです。低いレベルに合わせての「足並み揃え」であったり「足の引っ張り合い」であったりしては、真の「和」とは言えません。より高いものを目指しての和であり協力だから意味があるのです。前向きな姿勢、積極的な雰囲気を学年の教師仲間の間で醸成していくことにまず力を注ぎましょう。それが、スムーズな通信活動の土壌づくりとなります。

通信を出していない先生からも温かい眼差しで見守られ、気持ちよく学級通信を出していくためには、学校全体の伝統や雰囲気、校長先生の考え方、学年の人間関係、保護者や子どもたちの状況など、いろいろな条件を考えながら、それなりの工夫をしていく必要があります。個別の問題であり、一般的な方策はありませんが、以下に具体的な進め方の例について記してみます。

①学年始めに、通信活動を学級経営案にキチンと位置づけ、それを管理職に提出します。同時に、通信の発行計画・編集方針などについて、学年主任にも見ていただき、謙虚に助言を求めるのです。校長から公的な承認を得る意味は大きく、また主任の立場を尊重することで学年の協力も得やすくなります。自分自身でも、通信活動を1年通して続ける覚悟ができます。


②学年主任や同僚教師には、単に「学級通信を出したい」と言うのではなく、第1号の具体物(草稿)を持って行って、「見てください、直してください」とお願いにいきます。その内容は、自分の主義主張や教育観や随想などではなく、子どもたちの学習活動から取材したものにすること。「教育活動に具体的に役立つ通信」であることを事実で示すのです。自分らしさを出していくのは、発行が軌道に乗ってからで充分です。


③学級通信も学校から発信する公文書の一つですから、毎号主任と管理職に目を通してもらう必要があります。草稿を複数の人に見てもらい、時にはプランの段階でも意見や知恵をいただくのは、通信の質的向上のためにも有効です。そうすることで、決定的な間違いを避けたり、誤字脱字などのケアレスミスを防いだりできます。学年の中に協力体制を築くためには、謙虚であること、独りよがりにならないこと、公開すること、同僚の中に出来るだけ多くの読者を持つことが不可欠です。


④学年の協力を得るためには、「前向きの和」づくりに積極的に関わることも重要です。特に、他の先生が出していない中で一人だけ発行する場合などは、それなりの努力が求められると思います。他の人が嫌がるような仕事も進んで引き受けること、学年通信を出している場合はその充実に力を発揮すること、また通信に取り上げたいような有益な情報を学年共通の話題として折に触れ提供していくことなど、心掛けるとよいでしょう。もし、「私も出したいけれど時間がない」という同僚がいる場合は、共通で使える内容について素材や話題の提供をして助けてあげると喜ばれます。「教育活動の充実に役立つ通信」であることを事実で示し、仲間を増やしていきたいものです。