ブックタイトル季刊理想 Vol.122

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概要

季刊理想 Vol.122

●なかす まさたか1938 年、北九州市生まれ。兵庫教育大学名誉教授。元兵庫教育大学学長。国語教育探究の会・国語論究の会顧問。国語教育地域学の樹立を目ざし、「歳事(時)記的方法・風土記的方法」を提唱する。著書に『国語科表現指導の研究』(溪水社)、『ことば学びの放射線』(三省堂)ほか。言葉の歳時記⑲兵庫教育大学名誉教授中 洌 正 堯憶えて活用したい冬の俳句 現行の小学校国語教科書に載っている俳句から50句ばかりを選んだ。冬は13句である。「憶えて活用する」というのは、憶えておいて、身の回りのものごとやできごとに接するとき、その見方、捉え方に習ってみようというものである。(俳句は読みやすい現代表記に統一した。) 前者は、大きな対象(遠山)に日の光が。後者は、小さな対象(冬菊)が自ら光を。 前者は、辺りに飛び散る思いがけないしぶきのような嗅きゅうかく覚。後者は、冷雨の触覚から、思わず孤こ えん猿に寄せた同情。 前者の木枯は、行きて帰らぬ特攻隊との重ね。後者は、木がらしにさらされている目刺、その側線の青い色に見る生の記憶。 抜き取った大根のまま道を教える。指し示す方向は明白である。 朝早く出かけて行った人があるらしい。下げ駄たの歯の跡が続いている。一方、病床にあって気になる外の積雪。また一方、外にあって、綿雪を直接、口で受けたい気分。 おしゃべりの内容を想像してみよう。 雪と氷の遊びの世界である。前者は、早くも雪の玉が飛んでくる。後者は、気持ちの上ではもう滑り出している。*俳句学習のヒント* 物語の情景や物語世界の解釈を俳句にまとめる実践が広く行われている。俳句作りの題材を物語世界に求めている段階である。現実世界に切り換えると創作になる。 早くには、「ごんぎつね」についての授業(青木幹勇先生)がある。最近のものでは、「はがき新聞」に対応して、「平家物語」の屋島の戦いについての授業(佐藤明宏先生)がある。「かすみゆく扇めがけて弓を引く」遠山に日の当たりたる枯野かな高浜虚子大だいこひき根引大根で道を教えけり小林一茶冬菊のまとうはおのがひかりのみ水原秋桜子初しぐれ猿さるも小こ み の 蓑をほしげなり松尾芭蕉斧おの入れて香か におどろくや冬ふ ゆこだち木立与謝蕪村木がらしや目め ざ し 刺に残る海のいろ芥川龍之介海に出て木こがらし枯帰るところなし山口誓子雪の朝二の字二の字のげたのあと田捨女いくたびも雪の深さを尋たずねけり正岡子規うまそうな雪がふうわりふわりかな小林一茶雪だるま星のおしゃべりぺちゃくちゃと松本たかし靴くつひも紐を結ぶ間も来る雪つぶて中村汀女スケートの紐むすぶ間も逸はやりつつ山口誓子季刊理想 2016 冬号 ◆ 7