ブックタイトル季刊理想 Vol.122

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概要

季刊理想 Vol.122

 近所にある区立小学校の評議委員を務めるようになって早14年になる。当時の校長先生から依頼された時はその小学校の在校生であった子供たちも社会人や大学生になっており、下の子たちも高校生、中学生、私は青森大学の教授であり早稲田大学院理工学研究科博士課程にも通うという状況で、小学校からは家族全員卒業という状況だった。 学校というところは保護者でなくなるとなかなか行く機会はない。しかもその当時は、丁度前年に大阪の附属池田小学校で無差別殺傷事件が起きて子供の安全のために学校も門を閉じていた。 四人の子供たちの子育てを通して、成長過程にある子供たちにとって、身体と心を作る食の大切さを実感していた私は、子供たちにとっての昼食である給食に果たして国産の安全安心な食材が使われているか、その供給元である日本の農業を応援してきた立場からも現場の小学校の給食事情を知りたいと常々思っていた。評議員であれば子供たちがどのような給食を食べているのか確認できる。もし、問題ありであれば意見申し上げよう。 「小学校運営に関し忌憚のない意見をお伺いしたい」。校長先生のこの一言で私は評議員をお引き受けすることにした。 その当時すでに小学校の給食の安全性が懸念されていて、給食センター反対運動や、国産野菜、近隣の地元野菜や低農薬無農薬野菜を用いてほしいという運動も起きていたが、小学校は6年間で卒業していくので運動の継続性が難しいのと、すでにそのころから給食費を払えない家庭もあって、自治体として対策は質より経費節減に向いていた。その頃私は中央教育審議会委員で、文部科学省の委員会では大学院大学の問題を審議していたが、食育に関する分科会か委員会の委員でもあって、朝食を食べずに登校する子供たちのために学校で朝、おむすびを提供できないか、という提案をしたが、誰がその費用を持つのか、自治体はこれ以上無理、給食費値上げは保護者の賛成を得られない、朝食は親の責任、という意見に一瞬で却下された経験がある。 私は「子育ては子食べさせ」と思っている。立派な大人ですらお腹がすいていると人はろくなことをしない。ましてや成長期の子供にとっては日々の食事が一生の身体を決定する時。頭の中にはいつも安全な国産野菜で学校給食を、という考えが巡っていた。 勇んで小学校へ出向いた私は「給食大好き」と言った子供たちの元気な声と校長先生の「子供たちは美味しい国産米で近隣の野菜、食材で安全な給食を食べていますよ」と胸を張った笑顔が忘れられない。 渋谷区なのでお米は「秋田こまち」。理由は渋谷駅にあった。忠犬ハチ公が主人を待ち続けた駅は渋谷駅でハチ公は秋田犬。という縁から渋谷区はハチ公のふるさと大館市と交流を持つようになり、給食のごはんは秋田こまちになったとのこと。 そしてごはんが美味しいので子供たちからごはんの日を増やしてほしいという声が上がっているとのことだった。 しかしパンや麺の業者との関係もあってごはんは三日、そのうち白米二日、ピラフや混ぜご飯が一日、という献立になっていた。青森大学副学長 見城 美枝子先生の時間」がなぜ必要なのか「こ食」化の時代、小児成人病も増えている。、食事という、動植物の命をいただくことへの感謝の念が失われつつある。この時代に、子どもたちの「給食の時間」の必要性を考えてみたい。近所の小学校の評議員となって子供たちはご飯が大好き季刊理想 2016 冬号 ◆ 3