ブックタイトル季刊理想 Vol.121

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概要

季刊理想 Vol.121

季刊理想 2016 秋号 ◆ 3 8月28日、大阪市内の大阪第一ホテルを会場に、全国から学校関係者を中心に約250名が参加する中、「主体的・協働的に学ぶアクティブ・ラーニングとは ―はがき新聞づくりの活用を通して―」をテーマに、第5回理想教育財団教育フォーラムが開催されました。 フォーラムでは理想教育財団・斎藤靖美専務理事が開会あいさつを行った後、十文字学園女子大学教授の冨山哲也先生による基調講演、シンポジウム、そして文部科学省初等中等教育局視学官の田村学先生による特別講演が実施されました。ここでは、その内容をご紹介します。 「どのように学ぶか」を重視 現在、人工知能の進展などを背景に、社会や仕事が大きく変わろうとしています。現状では、大学等が注力している教育と、実際の企業が期待している内容に大きなズレやミスマッチが生じているのも事実ですが、多くの保護者も実社会で活用できる能力を育ててほしいと考えるようになるなど、教育に関する社会の意識も大きく変化しています。 文部科学省では子どもたちが活躍する2030年の社会の動向を考慮に入れながら、次期学習指導要領の議論を進めています。具体的には「何ができるようになるか」を議論の中心に据えるとともに、その実現に向けて、「どのように学ぶか」を重視してきました。そこでクローズアップされてきたのが、日々の授業の改善、すなわち主体的・対話的で深い学びを実現するアクティブ・ラーニングの視点からの学習過程の改善です。 アクティブ・ラーニングというと、身体を動かす動的なイメージを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょうが、大事なことは「思考の活性化」です。「アクティブ」という言葉にとらわれて、一斉授業を取りやめるなど、偏った取り組みをする必要はありません。多様な取り組みを行いながら、子どもたちが情報や知識をうまく取り入れ、自分なりに情報を処理し、発表などを行う「思考発信型」の授業を行うことが大切です。「プロセスの充実」で「深い学び」を実現 具体的な授業の進め方としては、何よりも「プロセスの充実」が必要になります。身につけた知識を活用し、発揮するというプロセスを繰り返すことで、バラバラの知識が関連付き、組み合わされ、ネットワーク化される。そのことで、知識はより使い勝手がよい形になり、長期間にわたって安定するのです。 その実現のための要素として、重要な点が2つあります。異なる多様な他者間での音声言語を中心とした「対話」(インタラクション)と、文字言語を中心とした「振り返り」(リフレクション)です。 「インタラクション」によって、友だちの意見をよく聞くことはもちろんのこと、その意見を踏まえて自ら考えることで、自分の意見の質も高まります。さらに、熟考して文章を書く「リフレクション」を通して、さらにその考えが定着します。結果として、事実的で個別的な知識が、概念的で構造的な知識に変わる。すなわち、深い学びが実現できるわけです。 加えて、友だちとの交流などによる学習活動を通じ、一種の成功体験として、充実感、達成感、自己有能感、一体感をはじめとした「手応え感覚」が生まれます。それが好奇心や自立的欲求などを育み、より意欲的に学習活動に取り組むようになって、さらなる手応え感覚の獲得につながっていきます。これを繰り返すことで、子どもたちの「学びに向かう力」はより強固なものになるでしょう。第5回理想教育財団教育フォーラム開催特別講演学習指導要領改訂の方向性 ―アクティブ・ラーニングの視点による不断の授業改善―文部科学省初等中等教育局 視学官 田村 学先生