ブックタイトル季刊理想 Vol.121

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概要

季刊理想 Vol.121

子どもと生き方⑪吉本 恒幸 聖徳大学大学院教授新しい学習指導要領を読み解く総則編 その(4)●よしもと つねゆき聖徳大学大学院教授。全国小学校道徳教育研究会会長、公立小学校長を歴任。日本道徳教育学会会員。文部科学省道徳教育指導資料作成委員。中央教育審議会委員などを務める。12 ◆ 季刊理想 2016 秋号 学校で行われる道徳教育は、子どもの発達段階を踏まえ、学校の実態や課題に応じて、学校としての重点化を図ることになっています。何を重点にするかは最終的には学校が決めるわけですが、社会的な要請や今日的課題を考慮する必要があります。学校教育の基礎となる小学校での新たな学習指導要領では以下の文言が示されています。どの学年でも重視すること 自立心や自律性、生命を尊重する心、他者を思いやる心を育てることに留意すること。 自分のことは自分で行う自立心や自分を厳しく捉える自律性は、子どもが人格を形成していく上で核となるものです。子どもが自己をみつめ、自己を肯定的に受け止めることと、自己に責任をもち、自律的な態度をもつことの両面を身に付けることが求められます。 生命を尊重する心は、生命の尊厳を感得し、生命あるすべてのものを尊重しようとする心です。いじめによる自殺などが社会問題となっています。子ども一人一人が生きることを喜び、他者と共に生命の尊さについて自覚を深めていくことは、きわめて大きな課題です。 今回の改訂から加えられた他者を思いやる心は、相手の気持ちや立場を推し量り自分の思いを相手に向けることにより、よりよい人間関係を築くために重要とされています。学年段階で重視すること【小学校低学年】 挨拶などの基本的な生活習慣を身に付けること、善悪を判断し、してはならないことをしないこと、社会生活のきまりを守ること。 基本的な生活習慣は、健全な生活を送る上で必要なものであり、内容には健康や安全、物の活用や整理整頓に関することなどがあります。小学校での入門時期に指導することが求められています。善悪を判断し、してはならないことをしないことは、うそをつかない、人を傷付けない、人の物を盗まないなどが含まれます。【小学校中学年】 善悪を判断し、正しいと判断したことを行うこと、身近な人々と協力し助け合うこと、集団や社会のきまりを守ること。 この段階の子どもは、行動範囲や人間関係が広がります。社会への認識能力や思考力も発達します。いじめが顕在化する時期でもあります。したがって、いじめを見逃さないことの指導が求められます。【小学校高学年】 相手の考えや立場を理解して支え合うこと、法やきまりの意義を理解して進んで守ること、集団生活の充実に努めること、伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重すること。 この段階では、いじめが進行している場合があります。いじめられている友達に寄り添い共に苦しみを脱する勇気ある態度の育成を求めています。また、子どもは知識欲が旺盛で、集団における自己の役割の自覚も進みます。自分や社会の未来への夢や目標を抱き、理想を求めて主体的に生きていく力の育成が図られるようにします。また、国家・社会の一員としての自覚を育てることも重視します。・・・・・・・・ 子どもたちは人間関係の中で生きていきます。関係性は集団や社会、国家という広がりをもちます。道徳教育では、個人の価値観の多様を尊重しながらも、社会的に望まれる生き方があることを指導していくことになります。