ブックタイトル季刊理想 Vol.119

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概要

季刊理想 Vol.119

 今回原稿執筆の機会を頂戴したことを受けて、「はがき新聞」活用に関する雑感を述べさせていただく。ただし、「はがき新聞」活用実践者の方々からみれば、すべて自明のことであることはまちがいなく、今更感がぬぐえないことを冒頭にお詫びしておきたい。 二〇一六(平成二八)年も年賀状のやりとりで新年を迎えた。年賀状の文化は、今後も消えることはないであろう。宛名書きしているときの相手一人ひとりを思う心は、書き手に懐旧の情とともに満足感を与える。郵便受けから部屋へ抱えるように大切に運び、こたつに座って一枚一枚差出人を確かめるとき、まさに、その人との対話が始まる。年賀状に「今年こそ会いましょう」と毎年書いてあっても、実際には二年も三年も会えない友がいる。しかし、年賀状のその手書きの一文で、会えていない時間的空間的距離は一挙に縮まるから不思議である。はがき一枚の果たす役割はこのように大きい。 「はがき新聞」は、このはがきが果たす心や思いを届けるという利点を内蔵している。それに加えて、マス目が設定されている。このマス目の効用も欠かすことができない。〈埋める〉  方眼ノートや方眼メモを利用する人が増えているという。文字を整えやすいということが一番の理由であろう。文字数を把握しやすいということも利用を促す要因であろう。実は、この原稿もあえて原稿用紙設定にして打ち込んでいる。児童・生徒・学生それぞれに「はがき新聞」を作成させているが、ある共通点を見い出すことができる。それは、作文は苦手だ、いやだと言いつつも、マス目を埋めるに従って、意地になるかのように、マス目のすき間をなくそうとするということである。確かに、作文を書かせる場合にも、200字程度といった指示よりも、1段落で文字数は196字ちょうどで書きなさいといった方が、取り組みへの食いつきが違ってくる。 一字の増減に対して、悪戦苦闘が始まる。具体的には、まず漢字に置き換えるか否かの工夫を始める。次に読点をどこで打つかを検討し始める。さらに、どの接続詞を用いるかを吟味し始める。いわゆる、推敲を自発的に執筆しながら行うわけである。これは「程度」では行われない。やはり、「ちょうど」でなければならない。その目安となるのが、マス目である。マス目を埋めるという作業は、「型」を意識する活動となっている。これは「守破離」の「守」である。〈無視する〉 別の視点からマス目を考えてみる。先ほどの「埋める」とは相反する「無視する」である。せっかくマス目のある原稿用紙を使いながら、なぜかマス目を無視して作成する人が多くいる。しかも、出来栄えとしてはなかなかなもので、意欲的に書かれたものが多いのが特徴である。マス目の効用―埋める・無視する・俯瞰するはがきの効用―距離を縮める季刊理想 2016 春号 ◆ 13